「なんな、フレイルって?」

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「なんな、フレイルって?」

回覧板には行政からのフレイルチェックのお知らせが。この地区ではフレイルサポーターというボランティアが養成され、自治会などで指輪っかテストをして、啓発活動に取り組んでいるという。

祖母は、よくわからない、とごまかすように笑って、そのまま回覧板を隣の家に持って行ってしまった。
行政の取り組みは素晴らしいが、確かに、いきなりフレイルと言われても、多くの高齢者はスルーしてしまうだろう。

昨日から和歌山の祖母の家にステイしている。
まる1日、一緒に生活してみると、高齢者は僕らには気にならない些細なことに困っていることに気づく。

スーパーで買ってきた惣菜は、パッケージが透明だと、どこにテープが貼ってあるのかがわからない。
握り寿司も、お箸でつかむと途中で崩れてしまう。もう少しサイズが小さければ、もっと食べやすいはず。
賞味期限の表示は小さすぎて、たぶん見えてない。3日たったらラベル全体が酸化して赤くなるとか、そういう工夫はできないかな。
調味料のキャップもかなり開けにくそう。開けることはできても、リキャップができない。

それでも祖母は長年の手続き記憶とコミュニティの関係性で、一人暮らしを継続できている。
段差だらけの大きな家だけど、夜中に真っ暗な中でも、トイレの往復22メートルは安全に移動できる。
トマトやナスなど獲れたての野菜を分けてくださる方、「なんかやることないかー」といって玄関から声をかけてくださる方、一人暮らしだということをみんな知っているので、近所の人たちもちょこちょこ顔を出してくれる。

フレイルなので1200m離れたスーパーまで一人で歩いて行くことはできないが、顔見知りのタクシーの運転手さんがいつものように連れて行ってくれる。スーパーに行けば、たいがい誰か知人がいて、そこで会話を楽しむこともできるし(曜日と時間帯で誰がいるのか、だいたいわかるらしい)、レジのお姉さんも大きな声でゆっくりと話しかけてくれる。ポイントカードを財布の中から探すための30秒をせかすようなことはしない。
回覧板も牛乳配達も、立派な見守りのリソースだ。

数十年来の主治医は訪問診療をしない。しかし祖母と同様に歳を重ねておられ、おそらく年齢に最適化した医療を提供してくれているだろう。

東京だったら、介護保険で生活を支援しよう、という話にたぶんなるんだろうな。
見守りのために24時間の緊急通報システムが取り付けられ、定期的にヘルパーさんが入る。日中はデイサービスで過ごす。
しかし、祖母の長年の生活習慣である1日3回のシエスタに介護サービスを合わせることは難しいだろう。
暮らしを見守りながら、そーっと支えてくれるようなサービスってないだろうか。

高齢者が地域で一人暮らし続けるためには、医療やケアの充実以前にやるべきこと、やれることがまだまだたくさんありそうだ。


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医療法人社団 悠翔会 理事長・診療部長
1998年筑波大学卒業後、三井記念病院に勤務。2003年東京大学大学院医学系研究科博士課程入学。東京大学医学部附属病院消化器内科、医療法人社団 哲仁会 井口病院 副院長、金町中央透析センター長等を経て、2006年MRCビルクリニックを設立。2008年東京大学大学院医学系研究科博士課程を中退、医療法人社団 悠翔会 理事長に就任し、24時間対応の在宅総合診療を展開している。

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