「先生、今日、何の日だかわかる?」
診察中、突然、患者さんに問われた。
何の日だったかな…?
「今日は母の106歳の誕生日。」
そうだった。
四年前までは、毎年誕生日を一緒にお祝いさせてもらっていたんだった。
彼女は、母親を102歳で看取った後、自身の股関節疾患が増悪、要介護状態となり、僕の担当患者さんとしてお付き合いが再開していた。
今年、彼女は母親が脳梗塞を起こし、寝たきりになった年齢に達し、母の気持ちが少しずつわかるようになってきたという。
当初は母親との死別を受け入れることができずに苦悩されていたが、このところ、少しずつ自分の経験を客観視できるようになってきている。
それは忘却ではなく、彼女の心の中にお母さんが生き続けている、ということなのだ。
母一人、子一人。
ながく二人で暮らした空間で、いまは一人になった彼女は、いまも母親と対話をしながら、新しい暮らしにチャレンジしている。
僕も彼女のお母さんとのものがたりを共有しながら、これからも彼女の挑戦を見守っていきたいと思う。
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