変えると変わるの差は、大きい

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「人を変えることはできないけど、人は変わることができる。」

 

津川先生の投稿を読んで、改めてそんなことを思った。

医療の世界では、エビデンス(科学的根拠)に基づいた診療ガイドラインが普及しているにも関わらず、医師は必ずしもそれに従わない。実際、米国では、推奨されているケア(医療)を受けている人は約半数に過ぎず、非推奨または低価値のケアを受けている人が20%もいるという。
このような医師の行動を是正するために、①財政的インセンティブや②ナッジなどが試みられてきたが、これらの効果は限定的で、一番重要なのは③ポジティブで寛容な組織文化だった、という内容。

 

まさに選択理論と同じだと思った。
結局、金銭や監視・圧力などの外的コントロールで人を動かすことはできない。行動変容を起こすためには、内発的動機付けが重要だということ。患者に提供される医療の質、そしてその成果を改善するために必要なのは、医療職に対する誘導や強制ではなく、医療職の自発性を引き出す組織マネジメントなのだ、ということを改めてエビデンスを通じて確認できた。

人を変えることはできないけど、人は変わることができる。
大切なのは、変わりたい、変わらなければと思える環境を作ること、そしてそれを支援できる仕組みがあること。
医療機関の運営責任者として、改めて大切なことを思い起こすことができた。

 

本当に素晴らしいレビューです。たくさんの人に読んでいただきたいのですが、英語なので、一部内容のご紹介を。自己流ですので正確かどうかわかりません。ご注意ください。

 

①財政的インセンティブ(Pay for Performance(P4P))とは?

診療ガイドラインを遵守する、あるいはより良い成果を上げた場合にボーナスを提供する(そうでない場合の財政的ペナルティも含む)。医療においては、医師が提供した医療の量ではなく、医療の価値を評価するという考え方。有効な方法だと考えられてきたが、限界も見えてきている。
P4Pは、例えば「心臓発作を訴えるすべての患者がアスピリン療法を受けるようにする」など、治療プロセスを改善するのに効果的であったが、患者死亡率などの患者の転帰は必ずしも改善しなかった。それはテストの答え方を教えた生徒が、勉強ができるようになっているわけではないのと同様、プロセスの改善は必ずしもアウトカムの改善にはつながらないということ。
実際、英国の健康保険では、臨床医の収入の最大30%がP4Pであるが、英国の患者の健康は、このシステムが導入された2004年以来著しく改善されているわけではない。
また、財政的インセンティブは、逆にインセンティブを得るための有害な行動を引き起こす、あるいは医師のモチベーションを低下させる危険もある。

②ナッジとは?

科学的分析に基づいて、人間に『正しい行動』をとらせようとする戦略のこと。行動経済学の考え方。例えば、ウイルス感染のために抗生物質を処方した医師にその説明責任を求めたところ、抗生物質の不適切な処方を大幅に減らすことができた、など。
しかし、これもいつもうまく行くとは限らないことがわかっている。スイスでは同様のテーマで無作為試験が実施されたが、有意差は得られなかった。

③ポジティブで寛容な組織文化

組織文化(共通の価値観、信念、規範など)は、医師の行動に大きな影響を与える。
医師が創造的に課題解決しプロセスを改善するように奨励され、問題や間違いについて話をしやすく、上級者のリーダーシップによって支援されていれば、医師はケアの質やアウトカムを改善するために積極的に取り組む。一方、組織文化が弱い(管理者からの支援が足りない、職場環境が悪い)場合、患者アウトカムはより悪くなる傾向がある。
重要なことは、リーダーが現場の医師に関与し、組織文化を意識しなければ、財政的インセンティブもナッジもうまく機能しないということ。

組織文化の強化が、良いケアをもたらすことは研究で明らかになっている。
例えば、2年間で10の病院を対象とした研究では、より多くの命を救うために全職員をエンパワメントすべく組織文化をポジティブに変化させたことで、入院死亡率が1%改善した。もう1つの研究は、病院で提供されるケアの質は、病院のリーダーが、現場の医師に関与し、改善の努力を促し、非難されることのない環境を構築できることと正の相関があることを示した。

62の観察研究を体系的レビューしたところ、ポジティブな組織文化とアウトカムの改善(患者死亡率の低下を含む)との間に一貫した関連性が判明した。病院の文化を変え、アウトカムを改善した病院を詳しく見てみると、最高の成果は、上級管理職が臨床チームの決定を支持し、学習環境を作り、間違ったということを安心して話せることと関連していることがわかった。

財政的インセンティブとナッジはどちらも強みがあるが、単独で臨床医の行動を変え、ケアの質を向上させるには十分ではない。
組織文化は多様かつ複雑だが、なぜ医師がそのような方法で診療しているのかを理解し、より包括的かつ長期的な解決策を提示するための重要な視点を提供する。


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医療法人社団 悠翔会 理事長・診療部長
1998年筑波大学卒業後、三井記念病院に勤務。2003年東京大学大学院医学系研究科博士課程入学。東京大学医学部附属病院消化器内科、医療法人社団 哲仁会 井口病院 副院長、金町中央透析センター長等を経て、2006年MRCビルクリニックを設立。2008年東京大学大学院医学系研究科博士課程を中退、医療法人社団 悠翔会 理事長に就任し、24時間対応の在宅総合診療を展開している。

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