「Smoke-Free Gourmet」をはじめよう

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本日、5月31日は世界禁煙デー。毎年世界各地でイベントが行われ、タバコ対策、あるいは禁煙の啓発が行われる。毎年行われている恒例のものだが、日本にとって、今年のこの日は他国とは違う重要な意味を持っている。2020年の東京オリンピックに向け、WHOと開催国である日本は受動喫煙対策を行うことになっているからだ。

その対策実施には法令を伴い、法令には周知期間が必要であることを考えると、最悪でもこの秋には受動喫煙対策をまとめ制定しなければならない。そういった事情もあり、昨年中頃から、与党と厚生労働省が様々な駆け引きを繰り返しながら法案策定作業を進めてきた。

しかしそのプロセスは各メディアから報道された通り、異様な経緯をたどっている。まず国の対策は、各国の受動喫煙対策のレベルからすれば程遠いものとなった(今国会で審議入りしたところだが、審議は加速していない)。開催都市である東京都、都議会与党、関係団体はこれに痺れをきらし、従業員の健康を守るという名目で独自の対策案をまとめ、審議を経て条例を制定予定だ。WHOが求めている国全体での対策は不十分なままとなりそうだが、開催地周辺の対策は、どうにかメンツを保てそうだ。

 

執拗に続く「プレッシャー」はなぜ終わらないのか

医学界は当然ながら、早くから受動喫煙対策の充実を常に訴えてきた。疫学研究、メタアナリシスの結果を複数発表し、国や自治体が対策を講じる根拠の提示とサポートを行っているし、啓発の機会も数多く確保してきた。しかしそれでも、各界に影響がありそうな大きな発表があるたびに、たばこ業界の利害関係者から執拗に反論される事態が繰り返されている。

例えば少し前になるが、国立がん研究センターが発表した、厚労省研究班としての「受動喫煙による日本人の肺がんリスクが1.3倍」であるというメタアナリシスに対し、日本たばこはその手法に疑義があるという、おおよそアカデミアからは予想し得ないレベルの低い反論を行った。当然ながら後に完璧な再反論を受け沈黙したわけだが、今年に入っても同様の動きが続く。つい最近の2018年5月、雑誌に投稿された研究者の受動喫煙に関する寄稿に、自民党たばこ議員連盟に所属する大西秀男衆議院議員の事務所が抗議を行ったのだ。しかしその抗議内容は、上記に示した通り、返り討ちとばかりきっちりと再反論されてしまっている。

研究者からみれば稚拙とも言える抗議を繰り返し、国民の健康よりも権益を守らんとするかのような動きが続くのはなぜなのか。国がいまだに製造業者である日本たばこの大株主であり、慢性的な税収不足の中、約2兆円に及ぶ税収が手堅く見込めるとあって、関係団体が陰に陽に組織的に動いているとも言われる。しかし、飲食店における受動喫煙防止対策に限って言えば、ひとつだけ言えることがある。

それは、一般の人、飲食店オーナーをも頷かせる、日本の飲食店の大多数である小規模店を対象とした「強いエビデンス」の研究成果がまだ現れていないからである。受動喫煙の影響を論じる際に引用されるニューヨーク州ロンドンの店舗を対象にした研究は、日本も同様であろうという類推はできるものの、日本の実態と合致するかとは言い切れない。また日本の飲食店を対象にした産業医科大などの論文も、ファミリーレストランのみであったり、売上のみを見ていたり、セレクションバイアスの懸念が払拭しきれないものであるなど、残念ながら、飲食店オーナーの不安を払拭し「禁煙化しよう」と後押ししてくれるようなものではない。日本の飲食店の大多数は個人または小規模な法人の経営によるものであり、禁煙化が時代の流れだと理解しているものの、万が一失敗してしまえば後がない。二の足を踏むのも仕方ない事情があるのだ。

やはり、シンプルに「禁煙化してみたら売上が上がった」「まったく影響がなかった」という、彼らと同じ立場の飲食店の分かりやすいプラクティスを積み上げることが、行動変容を起こさせるマイルストーンになるのだろう。

藤沢に、禁煙とグルメに命をかけるインフルエンサーがいた

実は何年も前から、医師でありながら、地元藤沢の飲食店に働きかけ次々と完全禁煙化を実現させ、そのプラクティスを作り上げようと奮闘する医師がいる。日本内科学会評議員、神奈川県内科医学会『禁煙推進委員会』委員長、『禁煙-受動喫煙防止活動を推進する神奈川会議』理事と重職を兼ねながら、日本FA協会認定講師、日本酒きき酒師、日本ソムリエ協会ブロンズC、日本さかな検定2級と、美食を極めようとする長谷章医師(長谷内科医院 院長)だ。

本日の世界禁煙デーのイベントにも出席した長谷医師

長谷医師は医師の間でも、受動喫煙防止や禁煙の啓発活動で先導的な役割を果たしていると広く認められている。かながわ健康財団が主催し毎年開催されている「かながわ卒煙塾」でも講師を務め、喫煙者の行動変容を支援してきた。同様に、飲食店オーナーの禁煙店化への行動変容も促してきたというわけだ。これまで禁煙化に踏み切らせた飲食店は十指に余り、今もSNSで藤沢市内の禁煙店の情報を積極的に発信し、そうした店を行きつけにするなどして支援している。

MEDIAN TALKS編集部はこのたび、当サイトコラムニストでもある道海医師をはじめとする有志とともにその活動に賛同、当サイトで、長谷医師が禁煙化に成功した、おすすめ飲食店を探訪する連載企画「Smoke-Free Gourmet」を開始する。フードアナリストでもある長谷医師が完全禁煙化を働きかけたお店はすべて、彼のお眼鏡にかなった一線級のグルメ店。実際にお店を訪ね美食をご紹介しつつ、オーナーに、禁煙化したら売上が増えたのか、客層がどうなったのかなど、経営面の話も聞いていく。煙のないお店だからこそ楽しめるグルメの価値を一般の方に紹介しながら、同時に、飲食店オーナーの方々に、禁煙化にネガティブな要素はないこと、禁煙化でむしろ可能性が広がるということを示せればと願う。

記念すべき探訪第1回は、藤沢駅から東に少し離れた、川名橋のたもとに店を構える「割烹 てるい」だ。

 

[第1回] てるい 「女性客がリピートしてくれるようになった」

 

この暖簾をくぐると、地下へ潜っていく。お忍び感覚も楽しめるお店だ。暖簾横にしっかりと禁煙掲示がある
この暖簾をくぐると、地下へ潜っていく。お忍び感覚も楽しめるお店だ。暖簾横にしっかりと禁煙掲示がある

2013年4月9日に開店した「てるい」。藤沢駅南口から東へ、境川にかかる川名橋のたもとに開店した、ご主人の照井さんが1人で切り盛りする割烹料理店だ。

実は開店当初は禁煙店ではなかった。美味しさに感銘した長谷医師が足しげく通い、そのたびに「禁煙店にしましょう」と根気よく口説き落としたという。修行先の北海道と金沢で独自のルートを築き、仕入れてくる食材を中心に構成されるおまかせコースは、素材の味を活かす繊細な手仕事にため息がでる逸品ばかりだった。

最初に供されるスペシャルプレート。
塩水海胆と名残のトラフグの白子とウニ。大きさに驚く

 

筍ご飯にイクラとウニを乗せ。最後は出汁をかけて残らず堪能できる
日本酒を中心に、なかなかお目にかかれない銘柄が

照井さんお1人でされていることもあり、長谷医師は自分が食事を楽しみながら、ホスト役として日本酒を給仕してくださるなど、日頃から熱烈なサポーターとして積極的に手伝う。まるで従業員かオーナーか?と勘違いしそうになる。それほどこの店の味に惚れ込んでいるのだろう。

同席者に振る舞う長谷医師。あまりにも自然に注文まで取っていた
主人の照井さん(右)と長谷医師。訪問日の写真ではないが、こんな服装でまさに「店員」?になることも

 

「売上は2割くらい上がりましたよ」

メニューを堪能したあと、長谷医師おすすめの日本酒をいただきながらお店のことについて聞いた。先ほども触れたとおり開店当初は禁煙店ではなく、近隣から来てくれる常連客からも『この場所だともって3ヶ月かも』と、冗談混じりの本気で言われていたという。しかし、この4月初旬無事に5周年を迎え、満席になることも少なくない。この美味しさと親しみやすい雰囲気なら当然だと思ったが、長谷医師に勧められた禁煙化によって、少なからず恩恵を得られたようだ。

「まず女性客が増えました。で、その女性客がまたお友達を連れてきてくれる。お店でいろいろと話をしてくれるし、お友達にまた口コミしてくれる」と、禁煙化効果について嬉しそうに語る照井さん。実際、禁煙化後、売上は20%程度増えたという。

実は照井さんは50歳を過ぎてからの脱サラ組。しかも前職は大手呉服問屋の部長だった。役職の地位を投げ打って新天地に飛び込んだ理由を聞くと、「和服と和食、おもてなしという意味では同じ」という答えが返ってきた。美味しい食事を提供する「おもてなし」の担い手になりたくなり、退職後は北海道と金沢の料理屋で修行したという。定年が見えてきたところで一念発起し、2カ所で修行を重ねたと聞けば、体力的にも相当苦労しただろうことは想像に難くない。しかしそれを苦労話にせず軽妙に返す洒脱さに、このお店が人気店になっている秘密を垣間見た気がした。

 

Smoke-Free Gourmet 探訪ファイル #1 「てるい」

神奈川県藤沢市川名1-2-8 井澤ビル 1F

藤沢駅南口下車、線路沿い横浜方面へ徒歩10分、初めの踏切向い。藤沢駅から825m

営業時間:17:00~22:30(L.O.22:00)

定休日:日曜日・祝日

TEL:0466-50-6206

[お知らせ]

マップについて
「Smoke-Free Gourmet」企画では、探訪したお店の情報を上記マップに集約してまいります。完全禁煙、かつ美味しいグルメのナレッジベースとするべく多くのお店をご紹介する予定です。ご期待ください。

企画賛同者募集
本企画は、長谷医師が開拓した完全禁煙店を探訪し、禁煙店が経営上不利を被るものではないことを実践的に明らかにしていこうとするものです。以下の賛同者をお待ちしています。

ご一緒に探訪し、完全禁煙店を応援してくださる方
基本的には、お店に食事を自腹でしていただきます(ごく通常の食事会とお考えいただけましたら幸甚です)。存分に美食を楽しみ、周囲に完全禁煙店の素晴らしさをお伝えください。

企画に賛同し、コンテンツのサポートをしてくださる方、企業
コンテンツ作成に様々なかたちのご協力(撮影協力、タイアップ、スポンサード)をいただける方、企業を募集いたします。タイアップやスポンサーの場合、仔細は以下のフォームよりお問い合わせください。

みなさまとご一緒に、完全禁煙店を増やしていけるエコシステムを作ってまいりましょう。どうぞよろしくお願いいたします。


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完全禁煙の飲食店を応援する、医師をはじめとした有志の会。長谷章医師をはじめ、当サイトのコラムニスト道海医師を中心としたアカデミアの方々と賛同者から構成され、完全禁煙に踏み切った「美味しい」飲食店をとことん支援します。

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