【上海徇行記①】日本は、もうすでに遅れている

カテゴリー 佐々木淳, スペシャル0件のコメント

日本では、医療と介護の情報共有のためのICTプラットフォームに相当の予算措置を講じてきた。
しかし、その費用対効果について検証されたことがあるだろうか。

上海が日本よりもかなり進んでいるのが、オンラインによる医療情報の共有。

患者は、病院の受診予約、診察受付、支払い、処方までオンラインで完結できる。センターや病院にはコンビニに置いてあるような情報端末が配置され、スマホでの支払いもできる。処方内容や高次病院の予約情報はスマホアプリ経由で患者に届き、患者は自宅の最寄りの薬局・センターで薬を受け取ることができる。特殊な薬であっても、処方が出た段階で、薬剤物流センターから最寄りの拠点に薬が届けられる。

予約やオーダリングのみならず、患者の診療情報も地域の医療機関(1級から3級まで)のすべてで共有されている。最近では、小児期からのワクチンの情報なども統一で管理されるようになっている。もちろん情報の閲覧やカルテ記載には個別の権限が必要だが、基本的には患者情報プラットフォームが統合されている。上海市内246カ所の社区健康サービスセンターもすべて同一の仕組みに連結されているという。

技術的に難しいわけではないが、実際にこのような仕組みを導入することは容易ではない。個人情報の管理、セキュリティ、そして事業主体の異なる各医療機関のシステムのリプレイス。強力なリーダーシップと強制力、そして予算がなければ難しい。上海市は、この情報プラットフォームがもたらす住民の健康や医療に関する情報をリアルタイムに把握しながら、社会実験を重ね、より効果的な政策を検証することができる。同一のプラットフォームで運営されているという点では、英国のGPの電子カルテシステムに近いが、病院まで連結されているという点では、上海のほうが先進的かもしれない。

さらに上海ではアプリ化することで、住民自身もシステムに連結してしまった。IDとパスワードがあれば、自分の健康情報を一部閲覧することもできる。そして、アプリの柔軟さは、さまざまな機能追加を容易にする。基本的なオーダリング、電子カルテシステムに加えて、現在ではたくさんの追加のコンポーネントが稼働しているという。

電子カルテやオンライン診療など、個々のパーツの機能を磨いて差別化を図っても、現場の生産性の向上にはつながらない。
日本もそろそろ、部分最適から全体最適へ、視野を広げるべき時にきていると思う。


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医療法人社団 悠翔会 理事長・診療部長
1998年筑波大学卒業後、三井記念病院に勤務。2003年東京大学大学院医学系研究科博士課程入学。東京大学医学部附属病院消化器内科、医療法人社団 哲仁会 井口病院 副院長、金町中央透析センター長等を経て、2006年MRCビルクリニックを設立。2008年東京大学大学院医学系研究科博士課程を中退、医療法人社団 悠翔会 理事長に就任し、24時間対応の在宅総合診療を展開している。

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