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楽天発売の「感染疑い者には使えない」PCR検査キットに医療関係者から非難集中

2020年4月21日

楽天が4月20日に法人向けに発売を開始した、新型コロナウイルスの感染有無を調べられるPCR検査キットに非難が集中している。価格設定の高さに加え、検査結果は診断の参考にできないとされているからだ。さらに自己検査でPCR検査を行うこと自体の精度についても医療関係者を中心に疑問が上がっており、販売自体意味があるのかと非難が広がっている。

 

「感染疑い者には使えない」条件付きで、1セット14,900円

楽天が4月20日から法人向けに販売を開始した「新型コロナウィルスPCR検査キット」。同社が出資する遺伝子解析サービス会社「ジェネシスヘルスケア」が開発したもので、このキットを使って自身でPCR検査に必要な検体を採取し、ジェネシスヘルスケアに送り検査結果を受け取る仕組み。1セット14,900円だが、同社によると「特定の症状は出ていないものの、不安を感じられる方を対象」とし、法人が従業員に対して自己検査を促すことを活用シーンとして想定しているとみられ、そのため販売単位は100セットからとなっている。

この検査キットはPCR検査キットとして販売するものの、厚生労働省への届出、認可を得ていないものとみられ、そのため医療機関や検査機関が行なっている検査と同等の労力が必要にも関わらず、診断の参考にはできない。楽天もその発表の中で「厚生労働省が新型コロナウイルス感染症に関する相談・受診の目安として挙げている症状の出ている方は本検査キットを使用いただけません」と明確に表明している。

 

関係者から非難殺到 「もう我慢できない」

この発表に、直後から反発と非難が渦巻いている。SNSを中心に「意味がない」「価格が高い」「従業員を働かせ続けたい会社に利用される」などデメリットを次々と指摘される事態になっている。

特に、医療機器開発にかかわっているというこのユーザーの発言が多くの人にシェアされ、共感が広がっている。他の複数の識者からも、医療的な判断に使えないのであれば、結局医療機関に検査を求めてしまい医療崩壊に拍車がかかってしまうと懸念を示している。

 

はたして有効なのか? 自己検査自体にも疑問

もちろん、PCR検査自体は精度が認められているからこそ、医療機関・検査機関での活用が許されている。しかし、検査するには検体をしっかりと採取しなければならない。検体は鼻腔の奥まで綿棒を差し込み、その部分をしっかりと複数回拭って採取することとなっている。では鼻腔の奥までとはどこまでか。

編集部作成

このように鼻の奥の奥まで差し込まなければならず、さらにこの状態で鼻の中を「グリグリ」としなければならないのである。医療従事者の経験と技術があって初めて安全にできる作業であり、患者にとってもこの上なく苦しく、咳き込むことがほとんどだ。同様のインフルエンザ検査を受けた人ならいかに苦しいかが分かるのではないだろうか。これほど苦しい検体採取を、なんの経験もない個人が医療従事者と同様にできるかといえば、甚だ疑問だとしか言わざるを得ない。

実は自己検査への評価の低さについて、参考となる事例が先日みられた。新型コロナウイルス感染防止策としてのオンライン診療のあり方を審議する厚生労働省の検討会だ。この日は新型コロナウイルスに関する議題がほとんどであったが、最後に厚労省側からインフルエンザが疑われる患者について、検査キットを送付し自己検査してもらい、その評価をオンライン診療で行うことについて是非を問われた。

この議題について、検討会メンバーほぼ全員が「あれだけ苦しい検査を自分でできるわけがなく、検査精度が落ちる」として反対した。これは厚労省側が「規制のサンドボックス制度」により認められた実証実験が終了したことを受け、検討会に意見を求めたもののようだ。議論の際、メンバーから厚労省側にこの実証実験について参考にしたいと報告が求められたたが、驚くべき話が伝えられた。具体的な数字はあげられなかったものの、患者がキットを試した結果ほとんどが陰性で、その後結局対面受診したケースもあったというのだ。つまり、自分では苦痛に耐えて検体を採取することなど無理、という示唆がなされたことになる。

医療関係者が効果不明だとはっきり指摘しているものを、本来求められている手続きも経ず販売し、さらに価格も高いとあっては、企業モラルを問われても致し方ないのではないだろうか。

 

島津製作所は医療機関向けに1検体2000円強の「試薬」を販売開始

一方で、同じ4月20日に島津製作所が販売開始したのは、PCR検査装置を導入している機関向けに使える新しい試薬だ。これ自体では検査を行えないが、現在、検査結果を出すために必須だった重要な工程、RNAの抽出・精製工程が省けるため、検査に要する人手を大幅に削減でき、かつ2時間以上かかっていた全工程を半分の約1時間に短縮できるとしている。さらに価格も100検体分で22万5000円(税抜)としており、検査を行う機関向けではあるものの、楽天のキットの価格と比べ1検体あたり10分の1以下だ。

目的と販売ターゲットが違うとはいえ、この落差は企業姿勢の差を浮き彫りにするものではないだろうか。

 

 


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