薬を減らす、という使命がある

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福岡で在宅医療を実践されている内田直樹先生(医療法人すずらん会たろうクリニック)の素晴らしいご提言を読みました。

特に高齢者医療において、医師は薬を減らす勇気を持つべきです。

●加齢とともにリスク因子は変化します。「過栄養(メタボ)」をターゲットにするのはアクティブシニアまで。そこからの先のリスクコントロールのターゲットは「低栄養・サルコペニア・フレイル」。しっかり食べて、動いて、体重を増やす。これが高齢者のリスク対策。現役並みのメタボ対策は逆にリスクを高める可能性があります。

●加齢とともに体の機能は低下し、ボディサイズは小さくなっていきます。食事量も活動量も低下していきます。血圧もコレステロールもおのずと低くなっていきます。薬の代謝は遅くなる一方、相対的に薬は効き過ぎるようになります。変化していく心身の状況に合わせ、薬も細やかに調整をしていく必要があります。

●「患者さんの糖尿病と高血圧とアルツハイマー型認知症を治療する」のではなく「糖尿病と高血圧とアルツハイマー型認知症のある患者さんを治療する」。病気ごとに投薬や生活制限を重ねるのではなく、複数の病気とともに生きる人が、残る人生をよりよく過ごせるように生活を支援する。薬物療法は相対的な優先順位の中で考えるべきです。

●「なぜ出ているのかわからない」薬が、なぜ継続的に処方されるのでしょうか?「やめると悪くなるかもしれない」という判断は、変化というリスクを避けたい医師側の都合。それは「やめても変わらない」「やめたら改善する」という患者の利益を損ねるかもしれません。そもそも最初から判断する気がないのなら、医師が処方権をもつ意味がありません。

●成人で当たり前に使っている薬が、高齢者や特定の疾患の患者では意外な効き方をすることがある、ということは知っておくべきです。入眠導入剤や向精神薬は言わずもがなですが、胃薬のH2ブロッカー、抗アレルギー剤、排尿障害治療薬など、薬局で売られているような薬がせん妄の原因になることもあります。漢方やサプリにも注意が必要です。

●患者や家族、あるいは施設職員などが変化を好まないという側面もあります。薬を減らすことで不安が強くなり、QOLが下がるようなら、その時点では治療を継続すべきかもしれません。しかし、長期的に不利益であることが明確であるならば、時間をかけて少しずつ働きかけていくべきです。成功体験を共有できれば、先に進めます。

高齢者施設で主治医を担当すると、飲んでいる薬の多さにびっくりさせられることが少なくありません。
薬物療法の最適化は、在宅医と訪問薬剤師の重要な使命の1つだと思います。ぜひこまめに処方を見直す癖を、そして、自分が関与しなかった処方についても、自分が主治医であるならば、必要に応じて中止という判断をすべきだし、それを安全に進めるためには中止後のフォローを含め、多職種のサポートが重要になると思います。


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医療法人社団 悠翔会 理事長・診療部長
1998年筑波大学卒業後、三井記念病院に勤務。2003年東京大学大学院医学系研究科博士課程入学。東京大学医学部附属病院消化器内科、医療法人社団 哲仁会 井口病院 副院長、金町中央透析センター長等を経て、2006年MRCビルクリニックを設立。2008年東京大学大学院医学系研究科博士課程を中退、医療法人社団 悠翔会 理事長に就任し、24時間対応の在宅総合診療を展開している。

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