佐々木淳

患者中心の医療の中心は、医師ではない

2018年5月21日

先日、日本橋のクオールアカデミーで講義をさせていただきました。

人口の高齢化に伴う疾病モデルの変化、それに伴い、主たるリスク要因も動脈硬化から低栄養やサルコペニアに推移していくこと。生活習慣病に対する厳格な治療の重要性が低下していく一方で、薬物療法の有害事象の発症率は高まっていくこと。高齢者の在宅看取りのみならず、増加が続くがん死に対しても、地域医療が果たすべき役割が増大していくこと。そして特に後期高齢者の絶対数が激増する首都圏においては、今後、地域の医療介護リソースの不足が深刻化していく可能性があること。

このような状況において、地域で薬剤師が果たすべき役割について、僕の考えをお話しさせていただきました。

複数の医療機関で臓器別診療を受けている患者さんにとっては、調剤薬局の薬剤師が投薬内容を一元管理している唯一の医療専門職である可能性があります。そうなると、薬剤師が薬物療法の専門家として機能しなければ、ポリファーマシーや処方カスケードに適切に対処できません。

また診断から通院治療、入院治療、そして在宅緩和ケアへと、治療経過によって対応医療機関や主治医が変わっていく可能性のあるがん患者さんにとっては、調剤薬局の薬剤師が一連の経過を通貫してお付き合いできる唯一の医療専門職である可能性があります。薬剤師が薬物療法の専門家としてだけでなく、対人援助職として広義のサポーティブケアを提供することができれば、患者さんにとってはより心強いでしょう。

そしてフレイルや通院困難な高齢者に対しては、適切なタイミングで在宅へのアウトリーチを開始すること。これは単にアドヒアランス、服薬状況の確認だけではなく、食事や衛生まで生活状況全般を把握し、薬物療法そのものを適正化していくためにも重要なことだと思います。
特に在宅患者の増加が続く大都市部とその周辺部では、一人の医療専門職が対応すべき患者数も増加していきます。医薬連携を強化することで、より安全で質の高い在宅医療の提供が可能になるはずです。

講演では、悠翔会のポリファーマシーに対する多職種でのアプローチや、認知症BPSDに対する中核薬・抗精神病薬の処方適正化の取り組みについてご説明しつつ、僕が信頼している訪問薬剤師さんたちの具体的な仕事ぶりについてもご紹介させていただきました。

このようなお話しをさせていただくたびに、薬剤師という医療専門職の可塑性を再認識しつつ、同時にそれを活かすためには医師の薬剤師に対する認識を変えていく必要も強く感じます。

しかし、地域医療のあり方が再定義されつつある時代。
薬剤師が医者の下請けだと思っている医師は、地域で仕事をしていくのが徐々に厳しくなっていくでしょうし、主体的に専門性を発揮できない薬剤師についても同様だと思います。


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