疑義照会の効率化は三方よし

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薬剤師の苦労を物語る「あるある」の中で「疑義照会」に関するものも非常に多いのですが、言葉を聞きなれない方も多いと思いますので、まず解説します。

 

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薬剤師法24条

薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによつて調剤してはならない。

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患者さんにとって好ましくない事象が発生している場合、この薬剤師法24条に基づき薬剤師が行っている「処方医への問い合わせ」のことを疑義照会と言うんですね。

これは全処方の平均2.6%に存在します。年間8億枚の院外処方せん発行ならば、実に2,100万枚の処方箋について薬剤師が何らかの対応を行っていることになります。

 

この中でも分類がありまして

 

  • 形式的な疑義照会
  • 薬学的な疑義照会

 

前者は保険番号の間違いや性別間違い、処方医の印漏れなど単純なミスによって発行された処方箋の問い合わせ。後者の場合は患者さんの命に係わるケースが主で、使用に関して医薬品の相互作用(飲み合わせ)や患者さんのアレルギー歴などから勘案して行うことも多いのが現実です。

 

持ち込まれた時間帯によっては処方元医療機関と連絡が取れない場合もあり、直ぐに必要な医薬品を交付できず、ちょっと不便なこともあります。すると事情を知る由もない患者さんから、

 

「いいから早く出してくれよ」

「先生が良いって言っているから書いてある通りで出してくれよ」

 

と催促され、薬剤師が対応に苦慮するケースがあるわけですね。でも処方医と連絡が取れて、確認できなければ交付できないわけです。

日常診療で忙しい医師の時間を遮って行うという意味では薬剤師もその覚悟で臨んでいるわけですが、それが形式的な疑義照会の場合、医師より「そんな内容でわざわざ問合せしなくて良いのにね」と言われてしまうケースは、昔から多かったと記憶しています。

 

 

実は川崎市の医療機関で、この疑義照会を一斉に簡略化した取り組みがあります。「川崎市院外処方疑義照会プロトコル」と呼ばれています。川崎市内のほぼすべての地域中核病院、305店舗の薬局が参加しています。今までは一つの病院で地域の薬剤師会と協定を締結する方式が一般的だったのが、地域でこのような取り組みをしたのは珍しい事例です。
以下の項目について、逐一処方医に聞かず事後報告にするという取り決め内容です。

  1. 成分が同一の銘柄変更(例 フォサマック 35mg⇔ボナロン 35mg)
  2. 内服薬の剤形変更(例 OD 錠⇔普通錠 錠⇔散)
  3. 内服薬の規格変更(例 5mg 2 錠→10mg 1 錠)
  4. 半割・粉砕・混合
  5. 医療上の必要性が認められる一包化
  6. 軟膏・クリーム剤の規格変更(例 5g 2 本⇔10g 1 本)

要は、形式的な疑義や薬局からの要望で多く見られる事例をプロトコル化して、 粛々とやりましょうということですね。だいたい分かっているであろう項目についても逐一確認を取らなければならなかったことで、医師、薬剤師、患者さんの三者すべてが時間を浪費していたわけですが、これで「ムダな確認」が必要なくなり、効率化ができて三方よしだと思います。このような取り組みは、川崎市以外でも多くの地域で採用して欲しいので、全力で応援します。


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ふくろうメディカル代表・株式会社実務薬学総合研究所 薬剤師
東京理科大学薬学部 臨床准教授
1968年福島県郡山市生まれ。1990年東京理科大学薬学部に入学、大学院修了(薬学研究科修士)。武田薬品工業でMRとして勤務。その後薬剤師(薬局・大学病院・診療所)人材会社を経て現職。
※ふくろうメディカル:個人事業で医療関連の著作・研修資料作成などを行なっています。

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