NIPTについて、語ってほしいこと、語りたいこと

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NIPT(新型出生前検査)という、遺伝子を利用した新しい検査が世界中で広く実施されるようになっています。妊婦さんの血液中に含まれる赤ちゃんのDNA断片を分析し、赤ちゃんの特定の染色体疾患を調べる検査です。
この検査は、日本国内では具体的に次の3つの疾患を調べることができます。※1

21トリソミー(ダウン症候群)
18トリソミー
13トリソミー

これら3つを合計すると、胎児の染色体疾患の約7割に相当します。
また、この検査は他に、従来の非確定的検査と比べ感度99%と精度が高いこと※2、採血のみの検査のため確定的検査(羊水検査や絨毛検査)と比べ流産・死産のリスクがないこと、10週からと早い時期から検査可能という特徴も持っており、妊婦さんにとっても選択しやすいものとなっています。

ただ日本では現在、日本医学会および日本産科婦人科学会等の指針により実施にあたっては厳しい制限がついています。具体的には、日本医学会連合が認可した施設(検査前に十分な説明ができ、その後のフォローも行える施設)のみで実施可能という制限です。また34歳以上でないと受けられないことや、受けられても検索するのは上記3つの疾患のみ、という要件も付加されています。

この結果、認可を与えるに足る施設が極めて少ないという事態になり、検査をしたいというニーズに応えられず、結局羊水検査を受けるといった事例が出てきています。また、その状況に乗じ、無認可の施設がNIPT検査を勝手に始める事態も起きています。しかもその中には婦人科、産科ではない、美容整形や精神科といった明らかに専門外で、お腹の赤ちゃんの事については専門でない先生が実施されている施設もみられます。

その結果、気軽に妊婦さんは検査を受けるのですが、検査結果で陽性や正常以外の結果であった時、きちんと検査をしたところで対応してもらえず、どこでフォローしてもらったらいいのか路頭に迷う妊婦さんが多数出てきてしまいました。実際、こうした金儲け主義としか思えない不誠実な施設が増え続け、膨大な広告で妊婦さん達に近寄っています。

これは、とても看過できない、非常に憂慮すべき事態です。

このような事態を迎えて、日本産婦人科学会はNIPT実施施設の要件緩和を検討し、改定案を策定しました。今回、出生前検査については大変珍しく、日本産科婦人科学会がパブリックコメントを募集しています。
これは医療関係者だけでなく、一般の人も広く意見を投じることができるものです。ぜひ、一般の方々がどう考えているか、どういう事例に遭っているか、生の声をお寄せいただけたらと存じます。

コメントは3月24日いっぱい、23時59分まで募集しています。どうぞよろしくお願いします。

ここから以下は私個人の見解ですが、現場の出生前検査の専門家としてどうしても言いたいことがありますので申し述べます。
個人的には検査は検査であって、その結果によって妊娠を継続するか中絶するかはまた別の次元の問題であると思っています。残念ながら、この問題が日本ではまだ公にしっかりと議論されておりません。ですがこの改定案では施設基準に「中絶できること」が入っており、これでは最初から検査の結果によっては中絶が大前提のように妊婦さんとご家族が考えてしまうのではないか?と、とても違和感を感じています。
今緊急に対応しなければならないのは、検査を希望するすべての妊婦さんにきちんとした施設でちゃんと検査を行える、それが全国どこでも年齢などで差別されない状況を整備することではないかと思っています。

※1 なお、海外では上記3つ以外の疾患も調べることができる国もありますが、現在国内では日本医学会および日本産科婦人科学会等の指針により、上記3つの疾患のみが対象となっています。
※2 40歳の妊婦(ダウン症候群が100人に1人生まれるとされる)の集団の場合。


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茨城県出身。医師、医学博士。専門は産婦人科医(周産期医療、出生前診断、胎児医学、遺伝医学、メンタルヘルス、医療倫理、ITプライマリケア、医療IT、女性医学)。日本産婦人科学会認定医・指導医、臨床遺伝学認定医・指導医、認定産業医、アメリカ人類遺伝学会(ACMG)上級会員(Fellow)。
母校で講師として臨床医療・教育・研究に関わり、留学後には幅広い医療、特に女性の心とカラダの健康を総合的にサポートする医療を理想として、都内で都市型かかりつけ医のクリニックを開業。
日英論文多数、専門書(翻訳)執筆にも定評があります。
著書一覧はこちら
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