緩和ケアに対する「医療者の誤解」

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緩和ケアを受けに来る中で、
「抗がん治療は受け続けます」
という方が増えてきた。

それは「緩和ケアで苦痛は取ってほしい」「がんをコントロールしたい」という両方のニーズの表れ。私はそれは当然のことだと思う。

でも、一部医療者から「病状を受け入れていない」と批判される。なぜなのか。

確かに、抗がん治療が厳しくなってきていることは事実であるものの、「それでもどうにかしたい」という気持ちを持つことは自然なことだ。
それを「病状を受け入れていない」から間違っている、と医療者が批判し、現状を「受け入れさせる」ために絶望的な説明をする。

それは誰の、何のためになるのか。

10年前の抗がん剤なら、「抗がん剤するほうが寿命が縮むから」と説明し、納得いただくというのは成り立った。しかし、治療法が発達したいま、それが成り立たない例も増えている。ほとんど副作用なく、治療を継続することもできる。

早期からの緩和ケアの第一人者であるTemel先生をして

「最近の免疫チェックポイント阻害薬の発展のために、専門的緩和ケアが入るべきタイミングは難しくなっている」

と言わしめている。

そんな時代に、「厳しい病状を受け入れてからが緩和ケア」なんて言っている場合ではない。

「良いことに期待しながら、悪いことに備えましょう」という言葉は至言。

受け入れられる人にはそのように話すし、受け入れたくない人にはそのように話す。そして、どんな人も苦痛の海に落ちないようにセーフティネットを張っておく。

それは結局、どんな人にも緩和ケアが必要ということとイコールだ。


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川崎市立井田病院 かわさき総合ケアセンター腫瘍内科/緩和ケア内科

2005年北海道大学卒。家庭医療専門医を志し、室蘭日鋼記念病院で初期研修後、緩和ケアに魅了され緩和ケア・腫瘍内科医に転向。川崎市立井田病院、栃木県立がんセンター腫瘍内科を経て、2012年から現職。一般社団法人プラスケアを立ち上げ「暮らしの保健室」の実践や、社会的処方の実践論を研究する「社会的処方研究所」の開始など、病気になっても安心して暮らせるコミュニティを作るために活動している。

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