2018、私の総括

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在宅医療は、当初、高額な診療報酬により「量の確保」が優先された。その後、機能強化型在宅療養支援診療所、在宅緩和ケア充実診療所加算、そして在宅医療専門クリニックと、診療体制や緊急対応・看取りの実績評価を通じた「質の確保」へとシフトしていく。

しかし、「質量ともに充実した在宅医療が日本の津々浦々に」という状況にはならなかった。むしろ近年、在宅療養支援診療所は減少しつつある。その要因は医師の高齢化、要件の厳格化とされている。診療報酬による誘導も限界と思われる。

今後も、在宅医療の担い手を増やす努力は必要だ。しかし、同時に限られた担い手が、より効率的に在宅医療を提供できる体制も構築していく必要がある。そのためのキーワードは役割分担と時間コストの削減による「生産性の確保」であろう。

実際、2018年の診療報酬改定では、ケアマネジャーとの情報共有が強化された。またこれまで無報酬だった在支診のMSWが、退院時共同指導において初めて評価の対象となるなど、多職種連携・病診連携がより実情に即した形で深化した。
一方、連携の効率化を期待して地域単位で導入が進む情報共有のためのICTプラットフォームは成功事例が乏しいのが実情である。運用主体には現場のニーズをくみ取る努力を求めたい。

複数医療機関からの訪問診療も可能になったのも大きなポイントである。在宅患者は「副主治医」を持ち、より総合的な療養支援が受けられるようになった。管理料が算定できるのは1医療機関だけであるなど「主治医・副主治医制」を推進していく上では課題は残るが、算定ルールを改善できれば、24時間緊急対応に地域全体で取り組むなど、在宅医療の持続可能性の確保に発展することが期待できる。

遠隔医療(オンライン診療)に対する評価は、情報通信技術の進歩を考えると当然の布石であろう。時間コストの削減のため、僕らは細かなメッシュでクリニックを配置してきた。しかし、スマートデバイスは高齢者にも急速に普及しており、団塊世代が要介護状態になるころには、在宅医療ニーズの大部分がスマホで満たせているかもしれない。

軽症在宅患者に対する訪問診療の制限も議論されているが、これも生産性確保の視点で考えれば当然の判断と考えられる。職位としての医師の責任は大きい。しかし、実際に在宅で医療でできることは実はきわめて限定的である。医師は、患者に人生の所有権を返還し、患者を生活者・地域住民としてコミュニティに還さなければならない。

量から質、そして生産性へ。
医療モデルからケアモデル、そしてコミュニティモデルへ。

政策のコンセプトも、在宅医療のコンセプトも変化していく。
もちろん地域によって事情は異なるが、避けられない未来に最適化した診療体制を構築していく必要があると思う。

「限られた医療資源で、提供できる患者価値を最大にする。」

そのための答えは極めてシンプル。
あとは実際にやるか、やらないかだけだ。

2018年もあと少し。
残る時間を大切に使いたいと思う。

 

 

【 お知らせ 】

佐々木医師が運営に関わる「在宅医療カレッジ」の年末恒例企画、公開シンポジウムが開催されます。今年はソーシャルインクルージョンと地域共生社会をテーマに、10人のオピニオンリーダーが行政・学識・実践のそれぞれの立場から議論を戦わせます。聴講は以下のページで受け付けています。

<申し込みはこちら>

■日時:2018年12月14日(金) 18:00~21:00(17:30 開場)
■会場:東京国際フォーラム ホールB7 (東京都千代田区丸の内3₋5₋1)

<タイムスケジュール>
17:30~18:00 開場/交流タイム
18:00~18:55 在宅医療カレッジ・医療法人社団悠翔会 2018年運営報告
19:00~21:00 ラウンドテーブルディスカッション
「誰もが幸せに暮らせる『ソーシャルインクルージョン』って何だ? 改めて「地域共生社会」を考える」

パネリストの方々にはそれぞれショートプレゼンテーションに加えて、「日本がこれから直面する社会課題」「日本の取るべき今後の方向性」「地域共生社会の実践モデル」の3つのテーマについて議論し、最終的に「地域共生社会って結局なんだ⁈」という問いへの具体的なイメージを共有したいと思います。

パネリスト(順不同・敬称略)
●西村 周三(医療経済研究機構所長/前国立社会保障・人口問題研究所所長)
●浅川 澄一(ジャーナリスト/元日本経済新聞編集委員、日経トレンディ編集長)
●大熊 由紀子(国際医療福祉大学大学院教授/元朝日新聞医学記者・論説委員)
●唐澤 剛(前 内閣官房まち・ひと・しごと創生本部・地方創生総括官)
●藤岡 雅美(厚生労働省健康局健康課・課長補佐)
●井階 友貴(福井大学医学部地域プライマリケア講座教授)
●雄谷 良成(公益社団法人青年海外協力協会 代表理事・社会福祉法人佛子園 理事長)
●加藤 忠相(株式会社あおいけあ代表取締役・慶應義塾大学客員講師)
●下河原 忠道(株式会社シルバーウッド代表取締役)
●佐々木 淳(医療法人社団悠翔会 理事長・診療部長)※モデレータ

■参加費:
事前申込:3000円(※ 前日振込完了までとなります)
当日受付:4000円


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医療法人社団 悠翔会 理事長・診療部長
1998年筑波大学卒業後、三井記念病院に勤務。2003年東京大学大学院医学系研究科博士課程入学。東京大学医学部附属病院消化器内科、医療法人社団 哲仁会 井口病院 副院長、金町中央透析センター長等を経て、2006年MRCビルクリニックを設立。2008年東京大学大学院医学系研究科博士課程を中退、医療法人社団 悠翔会 理事長に就任し、24時間対応の在宅総合診療を展開している。

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