佐々木淳 スペシャル

【カンボジア徇行記】『最貧国』が持ち『先進国』が持たざるもの

2019年3月15日

カンボジアは最貧国の1つですが、著しい経済成長の真ん中にありました。
大都市部と幹線道路を除けば、道路はまだまだ未舗装で、街には土埃が舞っていました。

農業を中心とした産業構造、そして制度の不備を相互扶助によって補完した地域コミュニティ。
最低賃金は月180ドル、第一次産業の人たちはここまで届きません。年金も医療保険もなく、先進国目線からは「健康で文化的な最低限度の生活」のギリギリのラインであるように見えます。
しかし、貧しさの中にも、誰もが明るく、よりよい明日を確信して1日1日を全力で生き切っているような、強いうねりのようなエネルギーを感じました。
貧困とそれに伴う幼少期からの就労のために、中学校を修了できるのは50%、大学に進学できるのは1%。それでも若者たちは、自分の可能性を信じて、身の丈に合ったチャレンジを重ねています。
歩行者よりも自動車が優先、免許がなくても原付・モーターボートを運転(操縦)できる、危険な崖や川沿いにも柵はなく、トラックの荷台にはたくさんの荷物と人が乗っています。人の命への配慮は全然足りません。それでも、みんなその優先順位に納得し、ポジティブに行動しています。

日本にも課題はあります。しかし、それらの多くは制度の運用によるもので、教育制度、社会保障制度の完成度は非常に高く、所得レベルも高い。しかし、自分たちの力でよりよい未来をつかみ取ろうとする強い意欲のある人はどれほどいるのでしょうか。
何かあれば政府や自治体に制度の充実を要求する。しかし、自分たちの問題を自分たちで解決しようとする当事者意識のある人はどれほどいるのでしょうか。
カンボジアの人々の姿を見て、自分たちのあり様を内省せざるを得ませんでした。

これまで海外からの支援に依存していたカンポジアですが、着実に経済成長を遂げています。
国民所得は数年ごとに倍増し、裸足で遊ぶ少年たちの手にはスマートフォンが。道路には超高級車からトゥクトゥクまで様々な車両が溢れていました。

しかし、経済成長は大都市に若者を集め、農村部のコミュニティは機能不全に陥りつつあるようです。
経済成長が進めば、日本のように、この機能不全を制度で補完することができるようになるのかもしれません。でも、それが本当にこの国の人々にとって最適な方法なのか、少し複雑な気持ちになりました。
経済を成長させ、「健康で文化的な生活」を達成できることは素晴らしいことです。しかし、これまで大切にしてきた価値観、自然に流通していたコミュニティ内の価値の交換が、「お金」に置き換えてしまうことで、失われてしまうものもあるかもしれません。カンボジアの人々が、日本や他の先進国が踏んできた轍を踏まないことを願わずにはいられませんでした。

カンボジアの医療や医学教育はまだまだこれから。医療者としてボランティアに行くことで、この国の人々に貢献できるし、僕たち自身も学べること、気づけることはきっとたくさんあるはず。
そして、その手前に、教育や栄養、衛生など、取り組むべき課題はまだまだあります。医療者でなくても、この国の未来づくりに少しでも関わらせてもらえることで、僕らも大切な何かを思い出すことができるかもしれません。

カンボジアで汗を流す日本人医療者たち、そして「自分にできること」を信じて日本を飛び出した若者たちの姿を見て、そんなことを思いました。

貴重な機会を頂戴しましたジャパンハートの関係者の皆様、進ちゃん、野村くん、そして充実の視察ツアーをコーディネートして下さった「ものがたりの旅」の奥田さん、学び合えた仲間たちに心からの感謝を。


You Might Also Like

No Comments

Leave a Reply