佐々木淳 スペシャル

【阜陽徇行記2019①】中日介護実践共有フォーラム

2019年4月15日

上海から6時間、安徽省阜陽市に到着し、現地で開催の「中日介護実践共有フォーラム」に参加した。阜陽市は日本での知名度は高くないが、1,000万の人口を擁する巨大都市だ。

日本の過去は中国の現在、日本の現在は中国の未来。

午前中の「ケアニン」の上映を受け、80年代に日本の高齢者福祉の現場視察をしたことがあるという政府関係者が午後のシンポジウムに先立つ挨拶で、このように述べられた。

中国は現在、郊外の大きな箱物づくりに勤しんでいる。しかしベッドの稼働率は悪い。ICTの導入には熱心だが、必ずしもケアの現場がうまくまわっているわけではない。

今、日本は大型施設から、地域密着・在宅ケアに舵を切っている。小規模で家庭的な環境、大切なのはハコよりも人。「ケアニン」のように、穏やかに最後まで生活ができれば、高齢者はみんな喜ぶだろう。

そして「謙虚に学ぼう」と締めくくられた。

それを受けて、最初のプレゼンターは僕。

日本の最新動向 医療と介護の連携

最初に、日本の人口構造の変化から、社会課題が医療から介護へ、さらに医療と介護の連携、つまり地域抱括ケアシステムへと変化してきたことをご紹介した。

しかし医療と介護の連携が実現しつつある今、それだけでは解決できない課題が新たに顕在化してきていること、医療と介護を支える人材や財源の確保が難しくなってきていること、そして「地域共生社会」という古くて新しいコンセプトに基づいて試行錯誤を重ねていることをお伝えした。

「支える」ではなく「支え合う」、全ての人がお互いの存在を認め合える、雄谷さんの言葉を借りれば、全ての人が「機能する」。
心身の機能が低下しても、死期が近くても、最期まで自分の選択した人生を生き切れる、それが可能な生活環境と人間関係をそれぞれのコミュニティに再構築することが本当の意味での自立支援なのではないか。
そんなことをメッセージとしてお伝えした。

介護の本質と意義

僕に続いて登壇したあおいけあの加藤忠相さんは、映画ケアニンでも紹介された小規模多機能での地域に密着した「ケア」について、そのコンセプトから科学的根拠、実践、そして成果の検証まで、多数の写真とともに紹介された。

ケアとは高齢者に介護サービスを一方向性に提供することではない。我々は、地域の中で質の高い生活が続けられるような支えであればいい。それが、高齢者、介護職、双方にとっての生活の質につながる。

そして、中国の方々は日本の介護が進んでいると思っているかもしれないが、ちょっとした意識の変化で、あっという間に差は縮まる。日本は少子高齢化で先行しているだけだ。僕らはその第一線で試行錯誤している。これを共有しながら、一緒に高齢化という課題に向き合おう、と呼びかけた。

介護という職業の価値とは

最後の演者は未来をつくるKaigoカフェの高瀬比左子さん。日本でのカフェを通じた多職種間の対話の場づくり、それから得られる自己肯定感や成長のための気づきなどについて、その意義や具体的なこれまでの取り組みについて紹介した。
また、介護という仕事の魅力を積極的に発信していくためには「3K」に代表される介護のネガティブなイメージを転換していくことも大切であると強調した。

介護はクリエイティブで奥の深い究極のサービス業。介護専門職は、その人の強さ、その人らしさを引き出せる自立支援の専門家であり、その人の生活を支えるスペシャリストであり、急速に高齢化する社会を支える牽引者であると定義。
そして自分自身は新たな価値観を伝える発信者でありたいと、学校への出張カフェなど、社会全体へのアプローチについても紹介した。
そして対話のカフェづくりを提案し、講演を終えた。

中国でも介護業界は人手不足に喘いでいる。集まった事業運営者たちは、ケアカフェの取り組みに強く関心を持ってくれたようだった。

日中介護交流シンポジウムは、政府や行政関係者、そして北京、南京など、他の地域からも事業運営者が集まり、盛会のうちに終了した。
そして、日本の取り組みへの関心の強さを再認識した。

中国ではお年寄りに「してあげる」のを良しとする文化があるという。これは自立支援のコンセプトとは異なる。
しかし、日本においても同様だったと思う。老人福祉法の時代から介護保険法の時代に変わり、ケアのコンセプトも変わった。

主催者は何度も「ハードからソフトへ」の転換の重要性を口にしていた。
ソフトパワーは日本の強みのはず。
中国のケアの現場に、少しはお役に立てただろうか。


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