「食物銀行」と「時間銀行」

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台中市の紅十字(赤十字)の運営する「食物銀行」=フードバンクの拠点を訪問しました。
日本でも食品ロスが問題になっていますが、台湾ではフードバンクがシステマティックに全国展開し、地域の社会保障の一翼を担っています。

日本のフードバンクは地域完結で小規模なところが多いですが、台湾では地産地消?を原則としながらも、地域間を融通する仕組みがあります。また、その運営形態も「あるものをお恵みする」のではなく、世帯規模に応じて毎月一定のポイントが提供され、あたかもスーパーのような空間で、そのポイントを使って、必要なものだけを「買い物」するように自ら選択することができます。運営者は、毎月、どれくらいのポイントを発行しているのかを把握し、そのポイントに応じた分だけセカンドハーベスト食品を確保します。ちなみに、ここでは食品のみならず日用品全般、子供用の栄養食品や介護用パットなどまで取り扱われていました。

約1000㎡の広大なスペースは地元の篤志家により無料で提供され、スタッフもボランティア。
商品を提供するのは、メーカーから流通企業まで。そして地域の小規模な商店からカルフールのような大企業まで非常にさまざま。もちろん取り扱われている食品はすべて消費期限内のもの。最近では肉や魚などの生鮮食品も流通しており、それらを管理するための冷凍倉庫まで完備されていました。この倉庫設備も地元企業からの寄付。
特に面白いと思ったのは、行政機関も協力していること。日本でいえばかつて存在していた食糧庁にあたるのでしょうか、農糧署という行政機関からは一定量のコメが無償で提供されているそうです。

消費期限が近づき、販売できなくなったものを廃棄処分するのではなく、フードバンクを通じて再流通させる。
かつては近隣で、余り物のお裾分けするようなことは自然にあったと思いますが、それをコミュニティの中に仕組みとして作るとこういう形になるのかなと思いました。

新北市にも面白い仕組みがありました。それは「時間銀行」=タイムバンク。
高齢者の生活支援(実際には外出の付き添いや話し相手など)にボランティアとして参加すると、その時間が「貯金」され、将来、自分や家族にケアが必要になったときに、同じ時間だけサービスを無料で受けられるというものです。この「貯金」は家族以外の誰かに寄付することもできます。
実際の内容は高齢者支援そのものですが、「加齢のプロセスを学ぶ学習プログラム」としても位置付けられており、現在、1500人のボランティアが活動しているそうです。

面白いのは、ボランティアのサービスとして受けることもできるし、訪問介護などの公的サービスを使うこともできるというのです。後者は実際に費用が発生しているはずですが、これが免除されます。加齢のプロセスをきちんと学び、ボランティアとして高齢者と関わった経験がある人は、本人も家族もより健康な高齢者になるだろうし、介護サービスもより効果的に使えるのではないか(つまり、より少ない公的負担で済むのではないか)ということで、その節約相当部分の一部を行政が支給するのです。これは、ソーシャルインパクトボンドに近い考え方ですね。

誰かに何かを提供する。
その対価は必ずしもお金でなくてもいいのだということを改めて認識した台湾の2つの「銀行」の取り組みでした。


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医療法人社団 悠翔会 理事長・診療部長
1998年筑波大学卒業後、三井記念病院に勤務。2003年東京大学大学院医学系研究科博士課程入学。東京大学医学部附属病院消化器内科、医療法人社団 哲仁会 井口病院 副院長、金町中央透析センター長等を経て、2006年MRCビルクリニックを設立。2008年東京大学大学院医学系研究科博士課程を中退、医療法人社団 悠翔会 理事長に就任し、24時間対応の在宅総合診療を展開している。

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