高齢者の生活を豊かにするITとは?

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高齢者、そして認知症の人を包摂する社会システムを構築するためには、ICTの活用が欠かせない。その進歩は目覚ましく、毎月新しい技術やサービスが発表され、私たちの生活は益々便利になっている。電子マネーの普及で、知らない土地に行っても切符を買うのに苦労することはなくなり、新幹線も直前に予約してチケットレスで乗ることができる。このように、私たちの生活に深く入り込んでいるICTであるが、現時点では高齢者がその恩恵に浴しているとは言い難い。

 

これまでにも、高齢者や認知症の人を対象にしたICTの応用に関する取り組みは産学問わず多くある。しかしながら、その多くはセンサーを使って見守ることや、介護の効率化を目指したもので、残念ながら高齢者の生活を豊かにする、自律性を高めるという視点の取り組みは少ない。

 

 

われわれは、科学技術振興機構のセンターオブイノベーション(COI)プログラムの助成を得て、産学連携の取り組みとして、高齢者の生活を豊かにしたり、意思をくみとって自律的な生活を継続したりするためのサービスをICTにより実現できないか検討している。今回、2月27日に東京丸の内の京都アカデミアフォーラムで開催するワークショップでは、心理学、精神医学の知見をロボットやエージェントを用いた取り組みにどのように活かすことができるかを紹介する。このシンポジウムが、ICTによる新しい社会システムへの高齢者の包摂につながることを期待している。

 

ワークショップ「高齢者支援のためのロボティクスと心理学の融合」

 

日時:平成31年2月27日(水)13時30分~16時30分

場所:東京「京都アカデミアフォーラム in 丸の内」

東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビルディング10階

参加無料、事前登録制 お申し込みはこちら

 

 

 

また、われわれは、高齢者、そして認知症の人を社会的に包摂するための取り組みの基礎資料となるよう、「公私で支える高齢者の地域生活」シリーズとして、「認知症と民法」「認知症と医療」「認知症と情報」の3巻の発刊を企画した。これまでに「認知症と民法」「認知症と医療」の発刊を終え、3月には「認知症と情報」を発刊予定だ。

 

高齢者、とりわけ認知症の人は、記憶力、理解力や判断力の低下により様々な社会的機能に低下がみられる。現在は、医療介護の領域からの発信で、認知症のことを一般市民に理解してもらう取り組みが進められているが、認知症の人の生活を地域で支えるためには、それだけでは不十分で、スーパーやコンビニ、金融機関、宅配業者、不動産業者など直接、間接に関わっている民間企業の理解と協力が欠かせない。民間企業としても、認知症を発症した人がその企業のサービスや商品を購入できなくなれば、地域で顧客を失ってしまうことになる。

 

小賀野晶一、成本迅、藤田卓仙編.「認知症と民法」(勁草書房)
小賀野晶一、成本迅、藤田卓仙編.「認知症と民法」(勁草書房)

 

成本迅、藤田卓仙、小賀野晶一編.「認知症と医療」(勁草書房)
成本迅、藤田卓仙、小賀野晶一編.「認知症と医療」(勁草書房)

 

これらのシリーズは、序章に地域で暮らす高齢者が認知症を発症することで地域生活にどのような課題が出てくるかを事例形式で描き出し、後の章で現在ある支援制度や医学的な捉え方、支援のための理論などを解説した。これらは、科学技術振興機構の社会技術研究開発センター(RISTEX)の助成を得て行われた研究成果である。是非手に取ってお読みいただきたい。


平成7年 京都府立医科大学卒業。平成13年 京都府立医科大学大学院修了。
日本精神神経学会・日本老年精神医学会専門医・指導医。日本生物学的精神医学会・日本神経精神医学会・日本老年精神医学会 各評議員。日本老年行動科学会 理事。日本意思決定支援推進機構 理事。
専門領域 : 老年精神医学
研  究 : 精神疾患のニューロイメージング研究、認知症の臨床研究

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