iPS(人工多能性幹細胞)研究の世界的権威である山中伸弥氏が、個人として作成し情報発信しているWebサイトで、新型コロナウイルス対策に関する独自の「5つの提言」を発表した。様々なレイヤーで具体的な施策の提案がなされているが、第一に上げられたのは「今すぐ強力な対策を開始する」。臨床現場や識者から数多くの危機感が発信される中で、専門外とはいえ適切な情報提供に務めている第一人者からのメッセージは重い。
「今すぐ取り組まないと大変なことになる」
日本の医療の未来をリードする1人である山中伸弥氏。いうまでもなくiPS細胞を発明した世界的権威であるものの、公衆衛生や感染症の専門家ではない。自身でもそのことを前提としつつ、個人として独自のWebサイト「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」を開設。現在、1日2回をめどに積極的に研究者の立場から信頼できる情報の発信に務めている。
その中で3月31日、「批判を恐れず、勇気を振り絞って5つの提言をします」と宣言し、同サイト上で5つの提言を発表した。
提案は大きく以下の5つの柱から構成されている。
- 提言1 今すぐ強力な対策を開始する
- 提言2 感染者の症状に応じた受入れ体制の整備
- 提言3 検査体制の充実(提言2の実行が前提)
- 提言4 国民への協力要請と適切な補償
- 提言5 ワクチンと治療薬の開発に集中投資を
この提言は並列しているものではなく、優先順位があるものだ。まずは提言2にある症状に応じた受入れ体制を整備すべきとした。具体的には「無症状や軽症の感染者専用施設の設置」と「重症者、重篤者に対する医療体制の充実」。感染爆発に備え、症状に応じた適切なトリアージができる体制整備を提言した。
この整備を大前提として、次に挙げたのは検査体制の充実。このままでは医療感染者への2次感染が急増するが、自分が感染していることに気付かないと家族や他の人への2次感染のリスクが高まるとし、必要な検査を安全に行う体制の充実を求めた。
そのほか、他の識者も指摘しているが「厳格な対応をとっても、中国では第1波の収束に2か月を要した」とし、休業や外出自粛の要請と同時に適切な補償の実施を求め、ワクチンや治療薬の開発に関しては「アメリカ等でワクチンや治療薬が開発されても、日本への供給は遅れたり、高額になる可能性もある」とし、産官学の協力で国産のワクチンと治療薬の開発に全力で取り組むべきとした。
こういった提言の中でも、いちばん最初に表明されたのは「今すぐ強力な対策を開始する」というメッセージだ。「対策は先手必勝、わが国でも、特に東京や大阪など大都市では、強力な対策を今すぐに始めるべき」と強い言葉で関係者の決断を求めている。
この提言は発表直後から大きな反響を呼び、4月2日午前中には大手ソーシャルブックサービスではアクセス1位となり、大手テレビ局の取材も受けている。山中氏はその中で「今すぐ取り組まないと大変なことになる」と、同氏には珍しく強い口調で訴えた。