歪んだ評価、こそ歪んでいる

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この記事に書かれていること、一見まっとうそうに見えて事実誤認が多いため注意喚起です。免疫チェックポイント阻害薬と免疫細胞療法を混同させています。

統計的に効果が実証されていないのは免疫細胞療法であり、免疫チェックポイント阻害薬は統計的に効果が実証されている標準治療です。免疫チェックポイント阻害薬に対し「エビデンスがない怪しい治療」なんてことをいう医師がいれば、それは確かに勉強不足と揶揄されても仕方ありませんが、私はそんなことを言う医師に出会ったことはありません。

また、胃癌では指摘の通り免疫チェックポイント阻害薬を初回治療から使うことは推奨されていませんが、肺癌(の一部)では初回治療から使うことが標準治療です。それは統計的にそのほうが生命予後が改善するからそうなったのです。決して「免疫は個人によって差があり、免疫療法はこの統計上の問題がクリアできていない」からではありません。胃癌について、初回治療から免疫チェックポイント阻害薬を使うことで抗がん剤よりも寿命が延びるという証拠がないから使わないだけです。

将来的に研究が進めば変わるかもしれませんが、別の癌腫で免疫チェックポイント阻害薬を初回から使用しても、必ずしも寿命が延びないということが証明された研究なども報告されており、免疫チェックポイント阻害薬は決して魔法の薬ではありません。

ノーベル賞に乗じて、怪しげな言説を振りまく輩が大勢出てきていますが、信頼できる専門家の意見を吟味して見て頂くようにご注意ください。


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川崎市立井田病院 かわさき総合ケアセンター腫瘍内科/緩和ケア内科

2005年北海道大学卒。家庭医療専門医を志し、室蘭日鋼記念病院で初期研修後、緩和ケアに魅了され緩和ケア・腫瘍内科医に転向。川崎市立井田病院、栃木県立がんセンター腫瘍内科を経て、2012年から現職。一般社団法人プラスケアを立ち上げ「暮らしの保健室」の実践や、社会的処方の実践論を研究する「社会的処方研究所」の開始など、病気になっても安心して暮らせるコミュニティを作るために活動している。

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