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ある楽曲がえぐり出す「あの事件の実態」 告発にネット衝撃

2020年6月29日

今月中旬にインターネットに掲載されたある動画の内容が衝撃的だとして、一部で話題になっている。匿名の人物が自身のオリジナル楽曲を載せたものだが、その音楽性の高さとともに、語られる内容とその結末に衝撃を受けるとして賞賛が広がっているのだ。

一念発起して受験生活に邁進する前半、後半は…

楽曲がインターネットに掲載されたのは6月11日。cristal-zさんという無名のアマチュアラッパーの「Sai no Kawara」という楽曲だ。ここからの記事内容は動画の内容を語らざるを得ないので、興味を削がれたくない方はまず動画を最後までご覧になることをおすすめする。

(編集部注:ここから動画内容について言及しますので留意してお読みください)

 

 

32歳から決意の医学部受験 受験生活は順調も

「Sai no Kawara」はあるアマチュアアーティストの人生を語るラップだ。32歳まで仲間と音楽の夢を追い共同生活をしていたある男性が、年を経て自身と仲間の生活の変化を思い、人生設計を変更。32歳にして医学の道を志し、猛烈な受験生活を開始する。

アルバイトも辞め、毎月模試を受け続ける勉強漬けの日々を送り、模試では志望校の「A判定」を獲得。自信を持って試験本番へ向かうも、1年目、2年目と受験校すべて不合格という、彼自身にとって予想外の結果が続く。

彼はここでもしや、自身の年齢の高さがハードルになっているのではと気づいてしまう。医学部の入試は試験結果だけでなく、面接などで他の要素も考査されることが多い。在京の医学系大学を複数受験していたが軒並み不合格になっていることもあり、3年目は地方の大学も視野に入れ、そちらの大学でついに合格を勝ち取る。

しかしそれは、受験生活をずっと支えてきてくれた彼女と遠距離になることを意味していた。最後、彼は彼女にプロポーズし旅立っていくーー。楽曲のクライマックスはここに設定されているが、動画のほうは最後突如暗転。衝撃の結末が明かされる。

 

「医学部入試で年齢などを理由に不合格にされたと主張する元受験生の男性が…」

突然流されるのは、あるニュースの音声。

「医学部入試で年齢などを理由に不合格にされたと主張する元受験生の男性が大学を提訴しました」「34歳の男性は去年不合格にされましたが、その後大学側が調査した結果、合格点に達していたことが分かりました」

この楽曲のストーリーが事実であるばかりでなく、あの入試不正事件を描いたものであることが明かされる。さらに流されたのは、まさに衝撃的な告発録音だった。

複数の男性の声で「大変申し訳ない」「年齢の問題で不合格になりました」「まじめでいらっしゃるから」「不正ではない」「申し訳ないとしか言いようがない」「私たちも一緒にそういうところを勉強させていただきたい」といった声が複数サンプリングされ再生。どう考えても、この事件の被害者である当事者が、大学側との面談の場で言われた言葉だと考えざるを得ない。

そう、cristal-zさんは被害者本人で、しかも訴訟当事者だったのだ。

この年齢差別の不正入試事件は、同時期に発覚した性別差別のそれとともに大きな話題となったことは記憶に新しい。東京医科大学、順天堂大学、聖マリアンナ医科大学など少なくはない医学系大学で、学科試験以外の考査要素に「年齢」「性別」を設定し、試験の点数に係数をかけ恣意的に「高年齢者」「女性」を不合格にしていたことが発覚し大きな非難を受けた。特に東京医科大学は悪質だとして、文科省から助成金を保留されている。

本人が取材に答える 「あの音声はリアルなもの」
cristal-zさんはこの楽曲内ではっきりとこれらのことを明言していないが、ラップらしい、そしてアーティストらしい隠喩や婉曲的表現でそのことを示唆している。その中でも象徴的なのはサビの部分だ。

調じゃなくていいから

才じゃなくていいから

々巡り 巡り 繰り返し

東京 偉大なこの街

 

お気づきだろうか。文字にしてみれば分かりやすいが、順天堂大学と東京医大を暗喩しているのだ。またタイトルの「Sai no Kawara」は言うまでもなく「賽の河原」であり、「いくら続けても、後から後から崩される無駄な努力のたとえ」とされている。これも実際は合格していたのに不合格とされ、何年も苦難の受験生活を強いられた境遇を表現している。

この圧倒的な表現力と最後の衝撃的な告発に、動画の再生数は6月29日時点で50万を突破。「あなたの歌のおかげでいかに許しがたい年齢差別(性別差別)の事件であったのか見直しました」「不条理を音楽で昇華しようとするの、ブラックミュージック・HIPHOPの第一信条って感じがして凄く響く」「見終わってしばらくなにもできなかった」と、感銘を受けた視聴者から数百ものコメントが寄せられている。

本人はこの反響を受けた他メディアの取材に答え、自身が訴訟当事者であること、現在も各大学との訴訟、交渉が続いていることを認めた。また反響に驚いているとともに、楽曲に込められた隠喩などを「イースターエッグ」と表現。あまり「解読」が進んでいないとコメントし、まだ隠された秘密があることを示唆している。


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