緊急避妊薬処方をオンライン診療で可能とすることについて

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先日、厚生労働省のオンライン診療ガイドラインの見直し検討会が開かれて、こんな議題を話し合ったそうです。


まず、妊娠を希望しない女性が適切かつ手軽にアフターピルを入手できるメリットは非常に大きいと考えます。
しかしこの記事中にもありますが、処方のための初診がオンラインでも大丈夫、ということになりますと、専門家(産婦人科)に関わらずに入手・服用できてしまう可能性を広げてしまいます。

 

現在は対面診療のみなので、アフターピルをきっかけに来院したことで、その後に適切にOC(経口避妊薬)による管理に移行したり、子宮頸がん検査や性病(クラミジア)、月経困難や過多月経などの様々な婦人科疾患の相談や診察、治療ができているのですが、オンライン診療を可とすることで、そういった機会が減ってしまうおそれが多分にあります。

 

欧米では処方箋なしで手軽に手に入るから、日本でもハードルを低くしてもいいのではないかという議論もあります。確かに世界の多くの国々では、市販薬として薬局やドラッグストアで手に入れることができます。費用も1,000円から2,000円と手頃な価格に設定されています。英国やカナダなど、無料で提供している国や地域もありますが、高くても5,000円程度で手に入るのです。

 

しかしそのようにできるのは、欧米では避妊やピルに関する知識がしっかりと啓発され、普及されているからです。そして、公共(国や自治体)の補助も入るため、個人負担も軽減されています。これは医療機関や個人レベルの問題ではなく、「国」としてきちんと補助、サポートしているのかどうかということであり、見た目の値段や購入のしやすさだけを比較して議論を進めるのはナンセンスではないかと感じます。

 

さらに日本の一般の方達の状況をみてみると、今どうでしょうか?
現状、一般の方々がご自身で主体的に判断できるほど情報提供がなされ、そして定着していると言えるでしょうか。私はまったくそうは思いません。これは私だけでなく、多くの臨床医の先生たちの確固たる実感だと思います。

 

確かに72時間という制限がある中で、対面では人目が気になって受診をためらったり、休診や仕事のために受診できないおそれがあるから、オンラインでも認めようという論点もあります。でも考えてみてください。72時間というのは丸3日です。それ以内であれば間に合うのです。この制限をもってオンライン診療を認める理由にするのは違和感を禁じえません。

 

婦人科の敷居が高いともよく言われますが、果たして本当に一般の方はもちろん、オンラインで対応される婦人科医師以外の先生たちも、アフターピルに関わる様々な状況や内容をしっかりと理解して、服用するのでしょうか?
また、さきほど述べたような様々な疾患の可能性を考えると、むしろ、アフターピルがそれらを見つけるいいきっかけになるのではないかと思います。

 

さらに、オンライン診療では、一部に実際にみられるDVやレイプ被害の可能性を見逃してしまう可能性を否定できません。診察中にその可能性を見つけたとしても、オンラインでしか繋がってない状態で、果たして適切な所轄の警察や児童相談所に医療施設が通報や情報提供をできるのでしょうか?そういうことも含め、私たち専門医が対面で当たり前に遵守しているガイドラインを、オンライン診療をする医師が熟知し、適切に診療することを担保できるのでしょうか。

 

いろいろと懸念を述べましたが、最初に書いた通り、妊娠を希望しない女性が適切かつ手軽にアフターピルを入手できるメリットは非常に大きいです。ただし「適切かつ手軽に」入手できる仕組みになるならばです。この点が非常に重要です。

 

軽々しく決めてしまえば様々なことが見逃されてしまい、トラブルを呼ぶ原因になってしまうでしょう。結局は一般の女性にとって不利益になってしまうのではないかと危惧しています。この検討会はまだ続きますので、議論の推移を注目したいと思います。


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茨城県出身。医師、医学博士。専門は産婦人科医(周産期医療、出生前診断、胎児医学、遺伝医学、メンタルヘルス、医療倫理、ITプライマリケア、医療IT、女性医学)。日本産婦人科学会認定医・指導医、臨床遺伝学認定医・指導医、認定産業医、アメリカ人類遺伝学会(ACMG)上級会員(Fellow)。
母校で講師として臨床医療・教育・研究に関わり、留学後には幅広い医療、特に女性の心とカラダの健康を総合的にサポートする医療を理想として、都内で都市型かかりつけ医のクリニックを開業。
日英論文多数、専門書(翻訳)執筆にも定評があります。
著書一覧はこちら
https://www.amazon.co.jp/宗田-聡/e/B005LN0EOI

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