佐々木淳

300本のブラシ

2018年3月19日

久しぶりに仕事が入った、と86歳、一人暮らしのばあちゃんは笑う。静岡に300本のブラシを納品するのだという。

青竹の柄に、規則正しくたくさんの穴を開けて、そこに乾燥させたアロエの繊維を埋め込んで行く。全行程を一人で、全て手作業で。
気の遠くなるような話だが、ご主人と始めたこの仕事を、12年前にご主人を見送り、10年前にお姑さんを見送った今も、一人、黙々と続けている。
注文主も長年のつきあい。彼女の仕事ぶりをよく知っている。だから納期もかなり緩やかに設定してくれている。

私は死ぬまで働くよ。
働くのやめたら、きっとボケる。

そう自信満々に語る彼女は、すでに今年の四月の誕生日を迎え、自分が90を超えたと信じている。
もちろん、敢えて訂正はしない。


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